彼と一緒に購入した、お気に入りの弁当店のお弁当。自宅で食べ始めた直後、ご飯の上に一本の髪の毛が乗っていることに気づきました。
すると彼は、弁当をよく確認するより先に激怒。「店に電話する」とスマートフォンを手に取りましたが、髪の色を見た私は、あることに気づいてしまったのです。
夕食は近所の弁当店で買うことに
その日は、私も彼も仕事で帰りが遅くなっていました。夕食を作る気力が残っていなかったため、帰宅途中にある弁当店へ立ち寄ることに。
何度か利用したことのあるお店で、味もおいしく、店員さんの対応にも特に不満を感じたことはありません。彼は焼き魚弁当を選び、私は唐揚げ弁当を注文しました。
「今日はもう何も作らなくていいから楽だね」
そんな話をしながら弁当を受け取り、二人で自宅へ戻りました。
ご飯の上に髪の毛が落ちていた
帰宅後、すぐにテーブルへ弁当を並べました。彼は空腹だったようで、ふたを開けるなり勢いよく食べ始めます。
ところが、数口食べたところで急に箸が止まりました。
「ちょっと待って」
彼はご飯の上を指さしながら、険しい表情をしています。私も弁当をのぞき込んでみると、白いご飯の上に短い髪の毛のようなものが一本乗っていました。
長い髪ではなく、数センチほどの短い毛でした。
「これ、髪の毛じゃない?」
私がそう言うと、彼の表情はさらに険しくなりました。
確認する前に激怒した彼
彼は箸を置くと、かなり強い口調で言いました。
「ありえないだろ!」
さらに弁当の容器を指さしながら、
「飲食店で髪の毛が入るなんて、普通に考えておかしい。ちゃんと店に言ったほうがいい」
と、怒りが収まらない様子です。
私も気持ちのいいものではないと思いましたが、まずは落ち着いて確認したほうがいいとも感じていました。
しかし彼は、すでにスマートフォンで弁当店の電話番号を調べ始めています。
「今から電話する」
そう言って発信ボタンを押そうとしたため、私は慌てて止めました。
「ちょっと待って。もう少しよく見てみない?」
髪の毛の色に違和感があった
彼が見つけた髪の毛は、黒や濃い茶色ではありませんでした。照明の下で見ると、かなり明るい色をしています。
最初は弁当のおかずの一部かと思ったほど、薄い金色に近い髪の毛でした。
そこで私は、弁当の髪の毛と彼の頭を交互に見ました。彼は少し前に髪を明るく染めたばかりです。
店員さんたちの髪色までは覚えていませんでしたが、少なくとも目の前にいる彼の髪とは、驚くほどよく似ています。
私は言いにくさを感じながらも、彼に伝えました。
「え……でも、この色ってあなたの髪じゃない?」
怒っていた彼が急に黙り込んだ
彼は一瞬、何を言われたのか分からないような顔をしました。そして弁当の髪の毛を見たあと、自分の前髪を指でつまみます。
確かに色も太さも、よく似ていました。
さらに彼は食べ始める前、前髪が邪魔だったのか、何度も手で髪をかき上げていました。その時に抜けた髪の毛が、弁当の上に落ちた可能性は十分にあります。
彼はしばらく黙ったあと、小さな声で言いました。
「……俺のかもしれない」
先ほどまで「ありえない」と怒っていた勢いは、完全になくなっていました。
スマートフォンの画面には、弁当店へ電話をかける直前の状態が残っています。
電話をかける前に気づいてよかった
私は彼に、
「まだ店の人の髪だと決まったわけじゃないから、先に確認してよかったね」
と伝えました。彼も気まずそうにうなずきます。
もし、あのまま弁当店へ電話をしていたら、「弁当に髪の毛が入っていた」「どういう衛生管理をしているのか」と、強い口調で店員さんを責めていたかもしれません。
そのあとで自分の髪の毛だったと分かれば、さらに恥ずかしい結果になっていたでしょう。店員さんにも、必要のない謝罪や確認作業をさせてしまうところでした。
翌日まで引きずっていた彼
その後、彼は何事もなかったように弁当を食べようとしていました。しかし、明らかに気まずそうです。
「さっき、かなり怒ってたよね」
私が少し笑いながら言うと、
「もう言わないで」
と顔をそらしていました。
翌日になっても恥ずかしさは残っていたようで、「電話しなくて本当によかった」と何度も話していました。
異物を見つけても、まずは落ち着いて確認する
購入した食べ物の中に髪の毛のようなものを見つければ、不快に感じるのは当然です。本当に店側で混入した可能性がある場合には、商品を保管し、購入した店舗へ落ち着いて相談する必要もあります。
ただし、持ち帰った商品は自宅で開封するため、食べる人の髪の毛や衣服の繊維があとから落ちる可能性もあります。
今回の彼は、髪の毛を見た瞬間に「店のミスだ」と決めつけてしまいました。
けれど、色や長さ、食べる前の行動を確認したことで、自分の髪の毛である可能性に気づけました。
不快な出来事が起きた時ほど、すぐに相手を責めるのではなく、一度立ち止まって状況を確認することが大切です。
数分だけ落ち着いて確認したことで、彼は弁当店へ間違った苦情を入れずに済みました。
本人にとっては、思い出すたびに恥ずかしくなる出来事になってしまったようですが……。
※本記事は、日常で起こり得る出来事をもとに構成した創作エピソードです。

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